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GLP-1受容体作動薬リラグルチドが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に有用である可能性

Glucagon-like peptide-1 (GLP-1、グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬が脂肪肝炎を改善させることは今までに動物実験で報告されてきましたが、今回、ヒトに対する有効性を示唆する論文が発表されました(Lancet. 2016 Feb 13;387(10019):679-90.)。

この研究は、英国で行われた多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化試験で、肝生検により非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)と診断されたBMI 25以上の患者52名を対象に行われました。患者は無作為にGLP-1受容体作動薬の一つであるリラグルチド(ビクトーザ®)1.8mg/日投与群とプラセボ群に割り付けられ(各群26名ずつ)、投与48週後に主要評価項目である肝の組織学的改善の有無が検討されました。2型糖尿病患者はリラグルチド投与群で9名(メトホルミン9名、SU薬1名)、プラセボ群で8名(メトホルミン8名、SU薬1名)でした。

リラグルチド投与群で治療終了時に肝生検が施行できた23例のうち9例(39%)で組織学的に脂肪肝の改善が認められたのに対して、プラセボ群では肝生検を施行された22例中2例(9%)のみに組織学的な改善を認めました(p=0.019)。線維化の進行は、リラグルチド群で2例(9%)、プラセボ群で8例(36%)に認められました(p=0.04)。体重変化はリラグルチド投与群で‐5.3kg、プラセボ群で‐0.6kgと有意差を認めました(p=0.003)。ほとんどの有害事象はグレード1(軽症)から2(中等症)で、両群間で同様でしたが、下痢、便秘、食欲不振などの消化器症状はリラグルチド投与群で高頻度でした。

今回の結果は、既に動物実験で報告されているGLP-1受容体作動薬の肝臓に対する直接作用と、食欲抑制等を介した体重減少による脂肪肝炎改善効果の両方の作用が寄与した可能性があります。GLP-1受容体作動薬は現在、2型糖尿病の治療薬として日本でも使用されていますが、血糖依存的なインスリン分泌促進作用、グルカゴン異常分泌の是正による肝での糖代謝改善、食欲抑制効果など多面的な作用がありますが、これらに加えて脂肪肝炎改善によるインスリン抵抗性改善効果も重要な作用機序のひとつと考えられます。

(Lancet. 2016 Feb 13;387(10019):679-90.)

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