おかやまDMネット(岡山県糖尿病対策専門会議)

診療の手引き(総合管理医療機関用)

【定期的な腎症の評価】
①3~6ケ月に1回、尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)とeGFRを測定する
随時尿で尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測定する。
ACR300mg/gCrを超える場合は、随時尿で尿タンパク/クレアチニン比の測定に切り替える。

【管理指標および考慮する薬剤】
②HbA1c7%未満を目指して治療する
糖尿病治療ガイド、2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(いずれも日本糖尿病学会編)に準じて治療を行う。必要に応じて、おかやまDMネットウェブサイトの教育資材(以下、教育資材)を活用する。2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(日本糖尿病学会編)では、慢性腎臓病(特に顕性腎症)を併発する場合の血糖管理に使用する薬剤としてSGLT2阻害薬GLP-1受容体作動薬が挙げられている。GLP-1受容体作動薬は胃腸障害が投与初期に認められることがあるため、少量より開始する製剤が多い。また急性膵炎の発症に注意する。

③血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)を目標に血圧を管理する
上記を超える場合は、教育資材を用いて減塩指導を行うとともに、レニンアンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の投与を検討する。
効果不十分の場合は、レニンアンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の増量、またはCa拮抗薬利尿薬などの併用を考慮する。

④脂質異常症を有する場合は、糖尿病性腎症のある人の脂質管理目標値(表)を目安に目的達成を目指す
教育資材を用いて指導を行い、スタチン系薬剤を使用する。効果不十分の場合は、フィブラート系薬剤エゼチミブなどの薬物療法を考慮する。スタチン系薬剤またはフィブラート系薬剤投与の際には、横紋筋融解症に注意する。

【エビデンスのある薬剤】
⑤糖尿病性腎症の進展抑制にエビデンスのある薬剤の資料
糖尿病性腎症の進展を抑制するエビデンスのある薬剤として、従来のレニンアンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)に加え、SGLT2阻害薬ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が加わった。
SGLT2阻害薬はeGFR20mL/min/1.73㎡以上であれば投与を検討する。投与の際は適度な水分補給を指導する。尿路感染症、性器感染症(とくに女性)、外陰部・絵陰部の壊死性筋膜炎、正常血糖ケトアシドーシスに注意する。皮膚症状(薬疹疑い)を認めた場合は速やかに中止する。
非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(フィネレノン)はACE阻害薬またはARBを服薬している場合に追加投与を検討する。eGFRの低下や高カリウム血症に注意し、投与前および投与後に確認する必要がある。
・実際の処方においては添付文書を確認の上、ご使用ください。

【参考文献】
・糖尿病治療ガイド2022-2023(日本糖尿病学会編、2022)
・2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(日本の糖尿病学会編、2022)
・糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(日本糖尿病学会編、2022)
・動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(日本動脈硬化学会編、2022)
・CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(日本腎臓学会、2022)

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