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「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」が改訂されました

 我が国で最初のSGLT2阻害薬は2014年4月17日に発売され、現在は6成分7製剤が臨床使用されています。日本糖尿病学会では「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」が発足し、2014年6月13日に「SGLT2 阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が策定されましたが、この度、前回の改訂から約3年が経過し、2019年7月23日に3回目の改訂がなされました。今回の改訂の主な変更点としては、以下の3点が挙げられます。 

1.1型糖尿病患者の使用については一定のリスクが伴うことを医療者、患者ともに十分に認識すべきであり、対象となる患者について「十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみに使用するべき」と明記

2.1型糖尿病患者に使用する場合は、インスリンの過度の減量によりケトアシドーシスのリスクが高まる可能性に十分に留意しながら慎重にインスリンを減量することを推奨し、具体的なインスリンの減量方法を提示

3.SGLT2阻害薬を使用した際の皮膚症状に関して、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うことを追記

 上記1、2の背景としては、2018年12月以降、一部のSGLT2阻害薬が成人1型糖尿病患者におけるインスリン製剤との併用療法として適応を取得したが、ケアシドーシスのリスク増加が報告されていること、また、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応申請に対し、欧州医薬品庁(EMA)ではBMIが27 kg/m2以上に限定した承認であり、米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られているといった事実があります。このような状況から、1型糖尿病患者への使用に際しては十分な注意と対策が必要であり、今回の改訂で大幅に追記されたと考えられます。
 上記3については以前のDONATS記事でも触れましたが(DONATS 2019/5/20に掲載)、SGLT2阻害薬でフルニエ壊疽のリスクが高まることが報告されており、今回の改訂に反映されました。 

 近年、様々な大規模臨床研究からSGLT2阻害薬には血糖降下作用以外にも腎保護作用や心血管疾患の予防等、様々な優れた作用が期待されています。一方で上記のような使用上の注意点も存在することを十分に理解し、Recommendationに沿った安全な使用が望まれます。 

<参考>日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf

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